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ALOS-2サンプルデータ

植生の多い地域におけるInSAR解析結果 -2022年9月に台湾東部で発生した地震の事例-

2022年9月18日に台湾の東部でMw6.9* (米USGS発表) の地震が発生しました。震源となった台東県周辺では、建物の倒壊や列車の脱線、山間部での土砂崩れなど、甚大な被害をもたらしました。
パスコでは台湾東部を対象に、この地震前後に観測されたALOS-2のデータと、Sentinel-1のデータを用いて干渉SAR (InSAR) 解析を実施しました。本記事では解析結果をご紹介します。

*Mw:モーメントマグニチュード。震源における断層運動の大きさを反映した地震そのものの規模。

2時期の変化解析

【ALOS-2とSentinel-1のInSAR解析結果】
InSAR解析は、以下のエリアを対象に行いました。
トップ.png
図1では、Longitudinal valley断層 (shyu et al. 2005)** に沿って変動が発生していることが確認できます。一方で、図2は非干渉域が広く分布し、広域の変動状況は確認できません。               
   図1.png       図2.png   
下図、地震前のSentinel-2衛星画像 (図3) をみると、植生域において非干渉域の分布に違いがあることがわかります。これは、ALOS-2が植生への透過性の高いLバンドSARを有していることに起因しています。植生域が広く分布する地域ではALOS-2のInSAR解析が適していることがわかります。

図3.png
**断層位置はShyu et al. 2005を参照。Shyu, J.B.H., Sieh, K., Chen, Y.G., Liu, C.S. Neotectonic architecture of Taiwan and its implications for future large earthquakes. J. Geophys. Res. Solid Earth 2005, 1–33. https://doi.org/10.1029/2004JB003251.


【ALOS-2のInSAR解析結果 (変動量図) 】
ALOS-2のInSAR解析結果 (変動量図) は、360度の位相差がラップされているデータであるため、このままでは変動量の絶対値はわかりません。そこで、ラップされている位相差データに位相アンラッピング処理***を行うことで、変動量データへ変換しました。
図4の通り、Longitudinal valley断層の西側において、最大100cm程度の衛星に近づく方向の変動(左横ずれ、もしくは西側の隆起)が確認できます。 図4.png
***参考:SAR干渉画像の作成手順 | 国土地理院 (gsi.go.jp)

今回解析に利用した画像の詳細は以下の通りです。
ALOS-2観測パラメータ
  観測日:2022/5/19、2022/9/22
  観測モード:StripMap (SM3)
  解像度:10m
  偏波:HH+HV
  オフナディア角:32.5度
  ビーム番号:F2-6
  シーンID:ALOS2431380450-220519、ALOS2450010450-220922

ALOS-2プロダクト処理パラメータ
  処理レベル:レベル1.1
  使用軌道データ精度:確定軌道暦
  フォーマット:CEOS
  シーン移動量:1 (北方向)



上記ALOS-2の2シーン (解析前の画像) について関心のある方は、サンプル画像としての提供も可能です。お問い合わせ内容詳細に「台湾地震 サンプル希望」と入力し、問い合わせページからご依頼ください。